賃金支払の5原則ってなに?|通貨・直接・全額・毎月一回・一定期日
1ヶ月のなかで、給料日は社会人にとって最大の楽しみの1つですよね。1ヶ月よくがんばったと自分にご褒美をあげる人も多いでしょう。
でも、例えば3ヶ月分まとめてお米で渡されたら困っちゃいますよね。そうならないように、賃金の支払いには「賃金支払の5原則」というものがあります。今回はこの賃金支払いのルールについてざっくり説明します。
1 「賃金支払の5原則」とは?
五つの賃金支払いのルール!!
・通貨払の原則
・直接払の原則
・全額払の原則
・毎月1回以上払の原則
・一定期日払の原則
内容は文字通りですが、各原則には例外があります!!
2 「通貨払の原則」とは?
賃金は通貨で支払わなければなりません。お米や野菜などの現物給付は原則認められません。しかし下記の例外があります。
例外①法令もしくは労働協約に別段の定めがある。
「労働協約」という「使用者」と「労働組合」が約束を交わすことで、就業規則とは異なる「労働条件」を定めることができます。
この「労働協約」を定めることによって、例えば通勤定期券を現物支給することができます。
法令については、現在は別段の定めはありません。
例外②一定の賃金について確実な支払いの方法で支払う場合
労働者の同意を得ることで、下記の方法で支払うことができます。
・銀行等に振り込みすることで支払う。→賃金や退職手当
補足①▶︎労働者の同意を得る必要があるため、会社は就業規則等で賃金支払いを銀行口座に限定することはできません。
補足②▶︎労働者が振込口座を指定したときは同意を得たことになるので、例えば入社時に口座情報を提出したら銀行振込に同意したことになります。
・小切手などで支払う。→退職手当
3 「直接払の原則」とは?
直接、本人に渡さないといけません。未成年だからといって、代理人として親が受け取ることはできません。賃金債権を他人に譲渡した場合でも、その譲渡された人に渡すこともできません。
例外①使者に渡す場合
例えば労働者が病気で入院中に妻子などの使者に渡すことは、本人に支払うのと同一の効果が生じる場合として支払うことができます。
また、派遣労働者については派遣元からの賃金を派遣先の使用者が手渡すことだけであれば、直接払の原則に違反しません。
3 「全額払の原則」とは?
賃金は全額を支払わなければいけません。未払いはもちろんのことダメですし、飲食店の制服代などは使用者が決まりなく自由に控除できるわけではありません。
例外①法令に別段の定めがある場合
所得税や住民税の源泉徴収、社会保険料・雇用保険料の控除などです。
例外②労使協定+就業規則等に記載
「労使協定」という「労働者たち」と「使用者」の間で協定を結ぶことにより、本来なら法律違反の内容でも罰則の適用を受けないという効力があります。「労使協定」を結び、「就業規則」等に実際に賃金から控除する内容を定めることで、たとえば社宅代や福利厚生の費用などを控除できます。
また、賃金の精算や端数処理については以下の場合の取り扱いがあります。
◯過払い賃金の精算について
払い過ぎてしまった賃金をこれから支給する賃金から精算することは、労働者の経済生活の安定を脅かすほどのものではない限り、全額払いの原則に違反しません。
◯債権の相殺について
例えば、労働者の報告ミスなどで多めに営業交通費を受け取った場合でも、使用者が一方的に賃金から控除することはできません。しかし、労働者から同意を得れば控除することが可能です。※労働者の自由意志による同意であり、使用者の威圧的態度により同意させた場合は認められません。
◯端数処理
給与計算において、以下の表のような端数処理の取り扱いは認められています。
4 「毎月1回以上払の原則」・「一定期日払の原則」とは?
賃金は毎月一回以上、一定期日に支払わなければいけません。年俸制の場合でも分割して毎月支払う必要があります。また、一定の期日に支払わなければならないので、月給制の場合は「毎月◯日」や「毎月末日」と定めることはできますが、「第2月曜日」などと定めることは月によって変動するためできません。
例外は下記になります。
・臨時に支払われる賃金
・賞与
・1ヶ月を超える期間の勤務実績などによって支給する手当
5 まとめ
普段何気なく1か月働いたら口座に振り込まれる賃金でも、実は細かくルールが定められています。なかには家族の口座になら給与を振り込むことができると思っていた方もいるかもしれません。これらのルールは本人に確実に賃金が支支払われるためのルールです。給与計算業務を行う方はもちろん把握しておく必要があります。そうでなくても自分の毎月支給される賃金払いのルールをしっておくことは大切ですし、何よりなんとなく難しそうな「労働基準法」という法律が自分の身近に感じることができるのではないでしょうか。自分の賃金という身近なところから、「労働基準法」などの法律に興味を持っていただけたら幸いです。