労働条件通知書と雇用契約書って何が違うの?|労働条件の「絶対的明示事項」と「相対的明示事項」
会社に入社するときやアルバイトの契約更新をするときに「雇用契約書」や「労働条件通知書」を使用者から労働者へ渡されます。では、この「雇用契約書」と「労働条件通知書」は何が違うのでしょうか。また、一体何が書かれているのでしょうか。今回は雇用契約の締結の際の労働者に交付する書面についてざっくり説明します。
目次
1 労働条件通知書と雇用契約書って何が違うの?
書いている内容が同じであっても、目的が違う!
◎労働条件通知書 【法律で義務付けられている労働条件を明示をすることが目的!】
「労働基準法」では雇用契約の締結の際に、使用者が労働者に対して明示しなければいけない労働条件の事項が定められています。そして、この明示事項を網羅したフォーマットを厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます。そのフォーマットの名前が「労働条件通知書」です。
◎雇用契約書 【口頭契約でのトラブルを回避するために書面で契約を締結することが目的!】
法律では労働契約の際に書面で契約を結ばなければいけないという決まりはありません。しかし、書面での契約は必須ではないですが、口頭契約でのトラブルを回避するために雇用契約書で労働契約を結ぶ会社が多いです。
よって、労働条件通知書に記載する労働条件の明示は「義務」、雇用契約書は「任意」!
また、労働条件通知書は使用者から労働者へ「一方的に交付」する性質のもので、雇用契約書は使用者と労働者間で労働条件について「合意」して労働契約を締結するためのもので!
◎労働条件通知書兼雇用契約書 【実務では労働条件通知書と雇用契約書が一体化しているものが多い!】
採用の実務では、雇用契約書と労働条件通知書が一体化した「労働条件通知書兼雇用契約書」をよく見かけます。使用者は労働条件の明示事項が雇用契約書に記載されているものを二通用意し、労働者に記名捺印してもらって一通を交付します。これで、労働者に労働条件をよく理解してもらった上で労働契約を締結し、必要な明示事項の通知も同時に行っているのです。
よって、実務では労働条件通知書と雇用契約書が実質同じ内容になっていることが多い!
2 労働条件通知書って何が書いてるの?
「絶対的明示事項」と「相対的明示事項」がある!
労働基準法で明示しなくてはいけない労働条件には、絶対に明示しなくてはいけない「絶対的明示事項」と、規定を定めるのであれば明示しなくてはいけない「相対的明示事項」があります。
◎絶対的明示事項
①労働契約の期間に関する事項
②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
③就業場所及び従事すべき業務に関する事項
④労働時間等に関する事項
⑤賃金に関する事項
⑥退職に関する事項
⑦昇給に関する事項 ※口頭でも可。
◎相対的明示事項
①退職手当に関する事項
②臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)に関する事項
③労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
④安全及び衛生に関する事項
⑤職業訓練に関する事項
⑥災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
⑦表彰及び制裁に関する事項
⑧休職に関する事項
上記の事項を書面で交付(昇給に関する事項は口頭でも可)する必要があります。
また、労働者が希望する場合は、FAXや電子メールで通知することも可能です。
ちなみに、↓の記事で「就業規則」に明示しなくてはいけない労働条件について紹介しています。
3 その他の法律について
労働基準法以外の法律にも労働条件の明示について定められている!
下記の様に労働条件の明示について定めている法律が労働基準法以外にもあります。
労働契約法
①使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。
②労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。) について、できる限り書面により確認するものとする。
パートタイム・有期雇用労働法
パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れる際、労働基準法で定める事項のほか、「昇給 の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る 相談窓口」を文書(労働者が希望すればFAXや電子メールも可)等により 明示しなければならな。
4 まとめ
今回は「雇用契約書」や「労働条件通知書」の違いや記載内容について説明しました。
違いを知ると、「雇用契約書」や「労働条件通知書」という書面の名称についても腑に落ちるのではないでしょうか。
また、今回は労働条件の明示事項についても紹介しましたが、「就業規則」に明記しなくてはいけない労働条件とは項目に違いがあるため、興味があれば↑で紹介した記事をご参照ください。