療養補償給付ってなに?|どうやって給付されるの?どこの病院でもいいの?
業務上のケガや通勤中の事故によって病院などで療養を受けるときに労災保険から保険給付が行われます。健康保険では業務外のケガや病気で診療を受ける際には原則療養の費用の3割を被保険者が負担しますが、労災保険の給付ではどのようになっているのでしょうか。今回は労災で療養を受けた際の給付についてざっくり説明します。
1 療養の給付の名称について
保険事故の種類によって名称が違うが、内容はほぼ一緒!!
「業務災害」「複数業務要因災害」「通勤災害」といった「保険事故」の種類によって、名称が異なります。
◎業務災害→療養補償給付
◎複数業務要因災害→複数事業労働者療養給付
◎通勤災害→療養給付
「複数業務要因災害」「通勤災害」には「補償」の文字がありませんが、便宜上タイトル等は「療養補償給付」と表記させていただきます。
詳しい保険事故についての説明はこちらで↓↓
2 どのように給付されるの?
原則、「指定病院等」で「現物給付」!!
療養補償給付は「療養の給付」が原則。つまり現物給付です。
また、「療養の給付」が行われる「指定病院等」は以下の病院などです。
◎指定病院等
・社会復帰促進事業として設置された病院もしくは診療所
・都道府県労働局長の指定する病院もしくは診療所、薬局もしくは訪問看護事業者
つまり、上記の「指定病院等」で「現物給付」されます!
ただし、療養の給付を受けることが「困難」な場合や療養の給付を受けないことに「相当な理由」がある場合には「療養の費用」(現金給付)が支給されます。
◎給付の範囲について
以下の中から、政府が必要と認めるものが給付されます。
①診察
②薬剤または治療材料の支給
③処置、手術その他の治療
④居宅における療養上の管理およびその療養に伴う世話その他の看護
⑤病院または診療所への入院およびその療養に伴う世話その他の看護
⑥移送
つまりつまり、「指定病院等」で上記①から⑥で必要なものが「現物給付」される。でも、致し方ない事情があれば療養の費用が「現金給付」されます!
3 自己負担額はあるの?
窓口負担なし!
業務外の事由により健康保険を適用させて病院で診察を受ける場合は原則3割を窓口で自己負担しますが、療養補償給付は原則窓口負担はありません。会社に申請書を作ってもらい病院に提出することで手続きします。
ただし、「通勤災害」で「療養給付」を受ける労働者からは200円(健康保険法に定める日雇特例被保険者である場合は100円)を一部負担金として、「休業給付」から控除されます。なお、以下の者を除きます。
・第三者行為によって生じた事故により療養給付を受ける者
・療養の開始後三日以内に死亡した者その他休業給付を受けない者
・同一の通勤災害に係る療養給付について既に一部納付金を納付した者
・特別加入者
つまり、窓口での負担はなし!ただし、「通勤災害」により「療養給付」を受ける労働者は「休業給付」から一部負担金が控除される場合あり!
◎健康保険証を使って受診しないように注意!!
業務中にケガをして病院で診察を受ける際に健康保険証を使って窓口3割負担で受診(健康保険を適用)してしまうと、窓口で支払った3割を返してもらえる場合もありますが、月を跨いだりすると残りの7割を健康保険に返還して、別途労働基準監督署に費用請求しなくてはいけません。
4 いつまで支給されるの?
ケガや病気が「治ゆ」するまで!
療養が必要になったときから、傷病が治ゆするか死亡により療養が必要なくなるまで支給されます。
補足▶︎治ゆとは「症状が安定し、傷病が固定した状態」をいいます。例えば、事後で腕を切断した場合は以前の状態に戻るのは困難です。以前の状態まで戻っていなくても、これ以上療養の効果が期待できない場合は「治ゆ」したとされます。
5 まとめ
原則、労災の療養補償給付については労働者の負担はありません。労働者の給与からの保険料負担もなく、事業主が全額負担しています。
事業主には職場の安全に配慮する義務があるので、業務上の事故について労働者は費用負担なく療養を受けることができるのです。誤って健康保険を適用して療養を受けないようにしましょう。
また、会社に労災の申請書をお願いするのが気が引けるなんて人がいるかもしれませんが、大抵は快く応じてくれるはずです。労災かなと思ったら労務担当者にまずは相談しましょう。