標準報酬月額ってなに?②|どんな時に決定・改定されるの?定時決定?随時改定?

以前の「標準報酬月額ってなに?①」では、標準報酬月額がどういうものかを説明しました。では、この標準報酬月額は一度決まったらずっと変わらないのでしょうか?今回は標準報酬月額がどんなときに改定されるかを説明いたします。

前回の記事はこちら!

標準報酬月額ってなに?①|どんな時につかうの?どうやって決まるの?

社会保険の保険料や健康保険の傷病手当金などの手当、厚生年金保険の年金給付にいたるまで、何かと関係してくる「標準報酬月額」。 でも、この「標準報酬月額」とはいった…

1 資格取得時決定

入社時に決定!

入社時や労働条件の変更により加入条件に該当して社会保険に加入する場合の最初の「標準報酬月額」の決定です。

報酬の見込額から「標準報酬月額」が決定されます。通勤費も含まれ、時間外手当の支給が当初から見込まれる場合はその額も含みます。

2 定時決定(算定)

毎年、一回見直しが行われる!

毎年一回、「4月・5月・6月」の「実際にその月に支給された報酬」の「平均額」から9月の「標準報酬月額」を決定します。届出の名前が「健康保険・厚生年金被保険者報酬月額算定基礎届」というため「算定」と呼ばれることもあります。

具体的には、

①7月1日時点で事業所に使用されている。

②「4月・5月・6月」のうち報酬支払基礎日数が17日未満の月は除外

「4月・5月・6月」のうち、出勤日数や有給休暇など、各月の報酬の支払いの基礎となる日数(報酬支払基礎日数)が「17日※」未満の月があるときはその月を除いて、平均した額が「標準報酬月額」になります。

例えば、「4月 19日」「5月 16日」「6月 21日」の場合、4月と6月の賃金の合計を2で割った額が「標準報酬月額」となります。また、入社時期により4月支給の報酬がない場合は「5月・6月」の報酬を平均して「標準報酬月額」を決定します。

※特定の事業所で週の勤務時間が20時間以上30時間未満で社保加入になる短時間労働者は報酬支払基礎日数「11日」。

※週の勤務時間が30時間以上のパートの方などで「4月・5月・6月」の報酬支払基礎日数が全て17日未満の場合は「15日」。

③6月1日〜7月1日までに社会保険に加入した被保険者は対象外。

④「7月・8月・9月」に後に説明する「随時改定」が行われる場合は、その年の定時決定の対象外です。

⑤「4月・5月・6月」の3ヶ月に報酬支払基礎日数が全て17日未満など、通常の方法で標準報酬月額を決定することが難しい場合は例外規定あり。

実際の保険料が変わる時期は、その月の報酬から控除されている保険料が何月分かで変わる!!

◯「9月分の標準報酬月額」にかかわる保険料が、「10月」の報酬から控除の場合

※原則、保険料は「9月分の保険料」は「10月支給給与」から控除されます(翌月徴収)。

3 随時決定(月変)

「固定的賃金の変更」+「2等級以上変動」+「3ヶ月全て17日以上」で、年の途中にも改定!

定時決定のタイミングでなくても、年の途中に報酬額に変更があると「標準報酬月額」が改定されることがあります。届出の名前が「健康保険・厚生年金被保険者報酬月額変更届」というため「月変」と呼ばれることもあります。

具体的には、

①固定的賃金に変更がある。

手当の金額や通勤手当の支給単価に変更があったり、日給制から月給など賃金単価に変更がある場合に改定されます。

②「標準報酬月額」が原則2等級以上上昇、もしくは下降。

3ヶ月間の平均額を保険料額表に当てはめて、現在の標準報酬額から2等級以上の上昇、もしくは下降がある場合に改定されます。

③3ヶ月全て報酬支払基礎日数が17日以上

3ヶ月の各月が報酬支払基礎日数が17日以上(短時間労働者は11日以上)ある場合に改定されます。

上記要件に当てはまる場合は、昇給もしくは降級のあった月(図の場合は2月支給)から数えて4ヶ月目の標準報酬月額(5月の標準報酬月額)から改定されます。5月分の保険料が6月から控除される場合は図のように改定されます。

補足①▶︎固定的賃金に変更があった場合が要件なので、時間外手当が多く支払われた場合だけでは改定されません。

補足②▶︎手当が減少して「降給」した場合に3ヶ月の平均額にあてはまる「標準報酬月額」も2等級以上下降していれば改定されますが、「降給」したにも関わらず、時間外手当により「標準報酬月額」が2等級以上上昇した場合は改定されません。

つまり、「固定的賃金」の上下と「標準報酬月額」の上下は同じ方向を向いている必要があります。

3 育児休業終了時改定・産前産後休業終了時改定

育児休業終了時、産前産後休業終了時に改定して保険料負担を軽減!

育児休業、産前産後休業中は保険料の負担が免除されます。しかし育児休業が終わって保険料の控除が再開しても、職場復帰後は時短勤務などで休業前より報酬が下がるケースはよくあります。そんな時に「随時改定」よりもゆるい要件で「標準報酬月額」の改定が行われます。

◯育児休業終了時改定

①育児休業終了時に3歳に満たない子を養育している

②育児休業終了日の翌日が属する月以後3ヶ月間に受けた報酬の平均額より決定

③1等級以上の差があれば改定

③3ヶ月のうち報酬支払基礎日数が17日(短時間労働者は11日以上)未満の月は除外

④育児休業終了日の翌日に産前産後休業を開始している場合は対象外。※育休中に他の子を出産して産前産後が開始された場合など

上の図の場合、例えば1月勤怠分の給与が2月に支給される翌月払いでも、実際に育児休業が終了した1月に支給された報酬月から2月、3月支給が対象になります。(1月支給は12月勤怠分のため、報酬額0円、報酬支払基礎日数0日になり、平均額の算出から除外)

◯産前産後休業終了時改定

①産前産後休業終了日に、当該産前産後休業に関わる子を養育している

②育児休業終了日の翌日が属する月以後3ヶ月間に受けた報酬の平均額より決定

③1等級以上の差があれば改定

④3ヶ月のうち報酬支払基礎日数が17日(短時間労働者は11日以上)未満の月は除外

⑤産前産後終了日の翌日に育児休業を開始している場合は対象外。

参考) 養育期間標準報酬月額の特例

子育て中に標準報酬月額が低下しても、子育て前の標準報酬月額で年金額を計算!

「3 育児休業終了時改定・産前産後休業終了時改定」で説明したように、育児と両立して勤務することにより報酬が減っても「標準報酬月額」を改定して保険料負担を軽減する制度があります。

一方、「標準報酬月額」が下がることにより、将来の厚生年金額は減ってしまいます。そんなときに、被保険者の申し出によって子供を養育するようになった日の前月の「標準報酬月額」で年金額を計算する特例があります。

具体的には、

「子を養育することとなった日の属する月」から「下記に該当した日の翌日の属する月の前月」までにおいて、「子を養育するようになった日が属する月の前月の標準報酬月額(以後、従前標準報酬月額)」よりも標準報酬月額が低下した場合に、年金額の計算の際には「従前標準報酬月額」を使います。

①子が3歳に達したとき

②被保険者資格を喪失

③子を養育しなくなったとき

④他の子の育児休業・産前産後休業を開始 etc

4 まとめ

今回は標準報酬月の改定について説明しました。急に毎月給与から控除される保険料額が変わると驚くかもしれませんが、今回の記事の通り、特に定時決定(算定)については毎年決まった時期に見直しがされます。

また、産前産後・育児休業においては、「保険料負担を軽減する制度」と「将来の年金額は休業前の標準報酬月額で計算する制度」がありますが、注意が必要なのは「傷病手当金」の対象になるケガや病気による休業期間については、このような標準報酬月額の制度がないことは合わせて覚えておきましょう。